坐骨神経痛に関するQ&A
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1.坐骨神経は体の何処にありますか?
腰椎や仙椎などの脊椎の神経が寄り集まって坐骨神経となります。そしてお尻の方へ向かい、梨状筋の下を通り、大殿筋の下を通ってさらに下へ向かい、ふくらはぎや足の裏に分布します。
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2.坐骨神経痛とはどのような病気ですか?
坐骨神経の通り道の何処かで圧迫や締め付けが起こったときに生じる痛みの総称です。発生頻度は1.6~43%で、肉体労働をしている人に頻度が高く、腰痛患者の5~10%に坐骨神経痛を伴うと報告されています。
原因としては、腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、腫瘍、梨状筋症候群、骨盤内臓疾患、帯状疱疹などが挙げられます。神経根の圧迫による坐骨神経痛の原因として、椎間板ヘルニアによるものが90%を占めるとする報告もありますが、高齢化により脊椎の変形疾患である脊柱管狭窄症によるものが増加しつつあります。
症状は、お尻、太ももの裏、ふくらはぎ、足の裏、足の指などの痺れ痛さです。少し気になる程度の軽い痛みから腰を伸ばす事も仰向けに寝る事も出来ないほどの強い痛みまで程度は様々です。神経が障害される事による症状なので、切り傷や打撲などと痛みの感じ方が異なります。「ビリビリする痛み」「重苦しい痛み」「電気が走るような痛み」、「焼け火箸を差し込まれるような痛み」、「電撃痛」、「冷たい痛み」などで表現されます。特定の体勢で症状が強くなる場合があります。
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3.坐骨神経痛はどのように診断するのですか?
問診、診察、画像診断などを総合して診断します。画像診断として、単純X線、造影検査、CT、MRIなどを症状に合わせて行います。感染症、腫瘍による坐骨神経痛の鑑別が大切になります。神経ブロックの効果の有無が診断に繋がる場合があります。
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4.坐骨神経痛の治療にはどのようなものがありますか?
保存的治療と外科的治療があります。原則として、発症から6~8週間は保存的治療を行います。保存的療法として、薬物療法、神経ブロック療法、理学療法などを並行して行います。それでも症状が緩和されない場合は外科的治療(手術)を検討します。一方、高齢による脊椎変形で生じる坐骨神経痛の場合は、日常生活が高度に支障されない限り、保存的な治療を行います。
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5. 坐骨神経痛への神経ブロック治療にはどのようなものがありますか?
坐骨神経痛には、主に以下の神経ブロックが適応となります。
①硬膜外ブロック
脊椎の間から針を通して脊髄神経を包む膜(硬膜)の外に局所麻酔薬やステロイドを注入します。鎮痛薬の内服のみと比較した研究で、有意に痛みを軽減する事が報告されています。急性期は、1週間に1回程度、外来で硬膜外ブロックを繰り返します。硬膜外ブロックは当院で行う事ができます。有効性と合併症に関する説明を丁寧に行い、患者様のご理解を頂いた上で慎重に行っています。
②神経根ブロック
脊椎から出た神経根に直接局所麻酔薬を注入します。X線造影装置のある施設で行います。残念ながら当院では行っておりませんので、連携病院を紹介いたします。
③梨状筋ブロック
梨状筋症候群(梨状筋の圧迫による坐骨神経痛)が疑われる場合に選択します。このブロックの効果の有無が診断に繋がります。当院では、エコーで坐骨神経と梨状筋を確認してピンポイントで局所麻酔薬を注入します。局所麻酔薬による麻酔効果とともに、筋膜の間に位置する坐骨神経の周囲にスペースを作り、圧迫を解除する事による鎮痛効果も期待できます。
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6.坐骨神経痛の薬物療法にはどのようなものがありますか?
非ステロイド性鎮痛薬、抗うつ薬、抗けいれん薬、筋弛緩薬、オピオイドなどを使用します。非ステロイド性鎮痛薬は、胃粘膜障害、腎機能障害などの副作用が懸念されるため、短期間の使用に留めるか、胃粘膜への作用が少ないCOX2選択性の鎮痛薬やアセトアミノフェンへの変更を検討します。また、これらの薬の中には、眠気やふらつき、吐き気や便秘を生じるものがあるため、少量から眠る前に使用する、吐き気止めや便秘の薬を併用するなどの工夫が必要です。
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7.坐骨神経痛に理学療法は効果がありますか?
症状に応じた運動療法により有意に痛みや身体機能、就労状態、臨床所見の改善が認められます。当院では、できる限り迅速に強い痛みを緩和し、早期に運動療法が開始できるようお手伝い致します。
参考資料:ペインクリニック治療指針改定第4版