筋膜リリース(Fascia リリース/Hydroリリース)に関するQ&A
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1. 筋膜リリースとFasciaリリース/Hydroリリースは同じなのですか?
インターネットで「筋膜リリース」を検索すると、スポーツジム、健康器具、針灸、カイロプラティック、マッサージなどがヒットします。それぞれの分野がそれぞれの方法で筋肉痛を緩和する事を筋膜リリースと呼ぶようです。一方、医療の世界ではFasciaと呼ばれるさまざまな組織を包む膜の表面に出現する発痛源を注射などで治療する方法をFasciaリリースと呼びます。Fasciaは筋肉だけでなく靭帯、脂肪組織、腱など、さまざまな組織を包む膜の総称です。そのためFasciaリリースは筋肉以外の組織の痛みの治療にも用いられます(靭帯のリリース、腱のリリース、神経のリリースなど)。液体を用いて治療するのでHydroリリースとも呼ばれます。Fasciaの日本語訳が筋膜というわけでは無いのですが、当院では、患者さんに馴染みやすいように、Fasia/Hydroリリースを筋膜リリースと呼んでいます。
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2. 筋膜リリース (Fascia/Hydroリリース) とは、どのような治療なのでしょうか。
筋肉の痛みの発生源は筋肉を包む膜に発生しやすい事が分かっています。当院では以下の流れで筋肉性の痛みに対して筋膜リリースを行います。
- 問診や診察から痛んでいる筋肉の部位の目星をつけてエコーを当て、怪しい部位を探します。
- 時々筋肉を押したりしてリリース部位を決めます。
- エコーを使って注射の針先を筋膜と筋膜の間にピンポイントで誘導し薬液を注入する事で物理的に筋膜の癒着をはがします。
- 概ね1回の治療で数か所から10か所程度に注射します。
筋膜の癒着が剥がれると筋肉の滑走性が改善し、痛みが和らぎます。神経や血管は筋膜の上を走行しているので、筋膜リリースにより神経や血管の圧迫が解除され、神経障害性の痛みや血流障害に伴う痛みも緩和されます。上手く筋肉が緩むと、患者さんの中には「手や顔が暖かくなった」「手の痺れが軽くなった」などの感想をおっしゃる方がおられます。使用する薬液は、必ずしも局所麻酔薬である必要は無く、生理食塩水や重炭酸リンゲル、ヒアルロン酸などの麻酔作用を持たない薬液でも同様かそれ以上の効果を持つとされています。
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3. 筋膜リリース (Fascia/Hydroリリース) はどのような症状に効果があるのでしょうか。
筋膜リリース(Fascia/Hydroリリース)は、筋肉の収縮と硬直が成因となった肩こりや腰痛には、とても有効な治療法です。また、肩関節周囲炎(四十肩や五十肩)が治癒した後に靭帯の伸びが悪くて肩が動かしづらい時などに固まった靭帯をリリースする事で、肩の動きを改善する効果が期待できます。同様に、変形性膝関節症などで膝の周囲の靭帯の伸びが悪くて動かしづらい時にも靭帯のリリースで軽快する場合があります。また、頚椎症、坐骨神経痛など、神経の痛みを持つ患者さんの多くが、筋肉の収縮や硬直による肩こりや腰痛を合併しておられるので、神経ブロックで痛みが残るときに筋膜リリースを併用すると軽快する場合があります。痛い部位を無理にかばう事が成因と思われます。さらに、末梢神経の圧迫や周囲の組織との癒着(Anchoring)による手や足の部分的な痺れの治療に神経のリリースが奏功する場合があります。
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4. 筋膜リリースが効かない首、肩、背中の痛みにはどのようなものがありますか?
首、肩、背中の痛みが筋膜由来のものであれば筋膜リリースは有効です。逆に、肩関節の炎症(肩関節周囲炎)、頸椎や脊髄の病気(椎間板ヘルニアや頚椎症)、胸郭出口症候群、交感神経の過緊張などには効果が限られるため、別の治療を併用する必要があります。肩関節の障害には腱板のリリース(エコーガイド下でヒアルロン酸を使用して行います)や神経ブロックを併用する事があります。頸椎や脊髄の病気には点滴、星状神経節ブロックや硬膜外ブロックなどを検討します。胸郭出口症候群や交感神経の過緊張には星状神経節ブロックが有効です。これらの疾患の多くが筋膜由来の痛みを合併しているため、当院では痛みの根源の治療としてメインの神経ブロックを行い、筋膜リリースを補助的に併用します。
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5. 筋膜リリースの費用は?
首や肩、背中の痛みにはQ4.に挙げたような病気が隠れている事が多いため、当院ではできるだけ保険診療内で筋膜リリースをいたします。痛みの根源の治療に筋膜リリースを併用する時は、主となる痛みの治療の費用に筋膜リリースの費用は含まれます。初診で3割負担で、概ね3000円前後、2回め以降で2000円前後くらいです(検査や処方、使用する薬剤により変わります)。1回の診療で神経ブロックは1回分しか保険請求ができないため、基本的に、1回の治療では体の部位は1つに絞って治療させていただきます。一方、当院では、患者さんの通院のご負担を考えて、小さなブロックであれば一度に数か所の筋膜リリースを追加しております。ただし、「肩」⇒「腰」⇒「膝」などあまりにも遠い部位に一度にブロックを行う事は患者さんの負担が大きい事と診療に時間がかかってしまうため、体のあちこちが痛い場合は、日を変えて治療させていただく旨、ご承知おきください。
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6. 筋膜リリースを1回受けるだけで肩こりや腰痛が治るのでしょうか。
慢性の肩こりや腰痛をお持ちの方は、日常生活で筋肉に負担をかけるお仕事をしておられたり、無理な姿勢などの癖をお持ちの場合が多いので、1回リリースしてもまた戻ってしまう事が良くあります。そのような方は、定期的にリリースを受ける事をお勧めします。
筋膜リリースはストレッチやマッサージなどの理学療法と併用すると効果的です。整形外科、リハビリテーション、整骨院、針灸院など、かかりつけをお持ちの方は、そちらの治療を継続しながら筋膜リリースを併用する事をお勧めします。ご担当者様にリリース部位を指定していただき、その部位を治療する事も可能です。事情をお話しいただき、ご担当者様にマジックなどで印を付けていただくと助かります。大きな病院やクリニックでは、理学療法士と医師がタッグを組んで痛みの治療する事が当たり前となっています。
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7. 筋膜リリース (Fascia/Hydroリリース) は痛いのでしょうか。
筋膜リリースに伴う痛みは①針を刺すときの痛み、②発痛源にヒットしたときの痛み、③薬液を注入した時の痛み、④注射の後の痛みがあります。
①について:細い針を使用して刺すときの痛みが軽くなるように工夫しています。
②について:発痛源は痛覚が過敏になっているので、「当たり!」の時は特に痛みがあります。肩こりが酷いときのマッサージがとても痛いのと似ています。
③・④について:当院では保険診療で筋膜リリースを行う際は生理食塩水に局所麻酔薬を混ぜた薬液を使用します。しかし、生理食塩水のpHは5~6、局所麻酔薬のpHは4~7と酸性なので注入時や注入後に痛みが生じます。確かに、この薬液で筋膜リリースを行うと、一部の患者さんから注射部位が数日痛かったとお叱りを受ける事があります。筋膜リリース (Fascia/Hydroリリース) は筋膜や組織の癒着(Anchoring)を剥がして滑走性を改善する事で鎮痛効果を得るので、局所麻酔による麻酔効果は必要ではありません。むしろ、生理食塩水や重炭酸リンゲル、ヒアルロン酸などの方が安全で効果的とされています。しかし、局所麻酔薬を入れずに筋膜リリース (Fascia/Hydroリリース) の処置を行う事は、残念ながら保険で認められていません。
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8.つかはらペインクリニックでは局所麻酔薬を用いない筋膜リリース (Fascia/Hydroリリース) は可能ですか。
当院では、自由診療で局所麻酔薬を用いない筋膜リリース (Fascia/Hydroリリース) を行っています。注射の痛みを和らげ、より安全に行う事を目的として、pHを中性に調整した重炭酸リンゲルを使っています。局所麻酔薬に対するアレルギーをお持ちの方や妊娠中の方にも安心して治療を受けていただく事ができます。肩こりの治療の場合、診察、エコー、薬剤料、技術料込みで1回5500円(税込み)です。
問診や診察の結果、保険を適用した別の治療をお勧めする場合があります。例えば筋膜性の痛みでは無く、肩関節や頸椎の障害による肩こりと判断される場合などです。
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9.筋膜リリースに副作用はありますか?
筋膜リリースは他の医療行為と同様に副作用があります。血管穿刺による出血・血腫・穿刺部からの感染、注射後の穿刺部痛、注射刺激による遅発性筋痛、神経損傷、胸腔内出血・腹腔内出血などが生じる可能性があります。血管穿刺による出血・血腫のリスクが高くなるような薬を内服していたり、出血傾向のある方には別の治療法(内服や理学療法)をお勧めする場合があります。また、穿刺部からの感染については、穿刺部の消毒はもちろん、患者さん毎に医療スタッフの手指消毒を行い、エコーカバーを変えるなど、できる限りの対策をしております。神経損傷・胸腔内出血・腹腔内出血はエコーを用いる事でリスクを減らす事ができますが、完全ではありません。筋膜リリースの後に体調に変化を感じる事がありましたら、すぐにスタッフにお伝えください。
当院で施術する筋膜リリースの具体的な様子・流れを知りたい方は、こちらからご確認ください。