ビリビリ・ジンジン、「神経障害性疼痛」に関するQ&A
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1. 神経障害性疼痛とは何ですか?
神経障害性疼痛とは、感覚神経が障害されて生じる痛みです。神経が過敏になり、痛みの信号が出過ぎてしまう状態です。それに対し、侵害受容性疼痛と呼ばれる痛みがあります。切り傷や骨折などで生じる痛みで、受傷した瞬間に腕や足を引っ込めたり、ケガをした部位を安静にして体を守るなど、危険信号を知らせる役割があります。侵害受容性疼痛は、消炎鎮痛薬の効果が期待できますが、神経障害性疼痛は、通常の痛み止めの効果が期待できず、難治性の痛みになりやすい傾向があります。
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2. 神経障害性疼痛を生じる疾患にはどのようなものがありますか?
神経障害性疼痛を生じる疾患は、本当にたくさんあります。糖尿病などの栄養代謝障害、手術や外傷による神経損傷、閉塞性動脈硬化症などの虚血、鉛やヒ素などの中毒、帯状疱疹などの感染症、坐骨神経痛・椎間板ヘルニア・三叉神経痛などの圧迫性/絞扼性神経障害、自己免疫性疾患、腫瘍、ニューロパチーなどの変性疾患、などです。神経障害性疼痛の原因となった疾患毎に、効きやすい、効きにくい治療法があるので、それぞれの疾患に合った方法を選択します。
一方、侵害受容性疼痛には切り傷や骨折、打撲、火傷、関節リウマチ、変形性膝関節症、肩関節周囲炎(いわゆる五十肩)などがあります。これらのほとんどが急性痛ですが、治癒が長引くと神経系の過敏性が発現し、侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛がオーバーラップした混合性疼痛と呼ばれる状態になる場合があります。その際は神経障害性疼痛の要素を加味した治療法を選択します。 -
3. 神経障害性疼痛のサインは?
神経障害性疼痛のスクリーニング質問票がいくつかあり、それに挙げれられた項目が神経障害性疼痛のサインと考えられます。焼けるような(ヒリヒリした)痛み、ピリピリ・チクチクした痛み、電気が流れているような感じ、軽く触れるだけで生じる痛み、電気ショックのような急激な痛み、冷たい物や熱いもの(お風呂)で痛みが起こる、痛みの部位の感覚が低下している、痛みの部位がむくんだような感覚がする、などです。
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4. 神経障害性疼痛の病態と治療の柱は何ですか?
末梢神経から大脳までの感覚神経の経路のどこかが障害されると、感覚神経系の過敏性が生じます。軽く触れるだけで痛い、何も刺激が無いのに自発的に痛い、などの神経障害性疼痛に特有の症状が生じます。また、ヒトには痛みを伝える神経がある一方で、脊髄から脳への痛みの伝達を抑制する「下行性疼痛抑制系」と呼ばれる痛みを抑える経路があります。末梢の神経障害性疼痛では、この下降性疼痛抑制系の機能が減弱している事が分かっています。さらに、心理社会的な要因が、痛みの認知・訴えを修飾し、神経障害性疼痛を悪化、慢性化させる事にも注意が必要です。以上から、感覚神経の過敏性を押さえる事、下降性疼痛抑制系の機能を回復させる事、心理社会的要因を考慮して治療方針を選択する事、などが神経障害性疼痛の治療の柱となっています。
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5. 神経障害性疼痛の治療目標は?
神経障害性疼痛の機序については明らかにされていない点が多く、完全に痛みを取り除く事は難しいとされています。完全治癒を目指すのではなく、痛みの軽減とともに、ADL(activities of daily living:日常生活動作)やQOL(quality of life:人生の質・生活の質)の改善を目標とする事が重要です。
ペインクリニックでは、鎮痛補助薬と呼ばれる特別なお薬、神経ブロックなどを組み合わせて治療を行います。鎮痛補助薬は副作用や長期使用による体への影響がゼロでは無いため使用方法にコツがあります。また、神経ブロックは、痛みの部位・種類に合わせて様々なバリエーションが存在し、効果と副作用のバランスから最適な方法を選択する必要があります。ペインクリニックは、これらの特別な治療方法を得意としております。当院では、患者さんが痛みにより日常生活のどんな点で困っていて、どの程度痛みが取れれば、その方のやりたい事が達成できるか、を念頭に症状緩和のお手伝いをさせていただいております。神経障害性疼痛でお困りでしたら、どうぞ当院にご相談ください。